PTA非加入家庭の子どもが 記念品を受け取るのは、 不公平?

PTAをたすけるPTA'S(ピータス)卒業記念品

PTAが任意加入を前提とした団体であり、「社会教育関係団体」の一つに位置付けられることは、以前の記事でお伝えした通りです。

PTAはあくまで任意団体であり、加入義務などを明示した法律などはありません。

——引用元:PTAが任意加入ってホント? 「退会を認めない」「無理やり役員に」は法的に問題あり?

しかし、これまで長い間、強制加入を前提とした運営がなされてきてしまったことで、さまざまな問題も指摘されています。

その1つが「PTAの加入の有無で子どもへの対応に差をつける問題」です。

例えばPTAが卒業の記念品を購入する場合、PTAに加入している家庭からは「PTA非加入家庭の子どもにも記念品を贈呈するのは不公平ではないか」といった声が聞かれることもあります。

こうした指摘に対して、PTAはどのように考えれば良いのでしょうか?

 

加入しているかどうかで対応に差をつけるのは不適切

 

前述の通り、PTAはあくまで任意団体であり、法人格を与える根拠となる法律も存在しないため、「権利能力なき社団」や「人格なき社団」に該当します。

そのため、個々の団体の自治が重視され、個々の団体それぞれの約款や内規等、個別に判断しなければならないことが多いかと思います。

一方でそもそもPTAとは、「Parent Teacher Association、父母と先生の会」の略で、保護者と教師が協力して学校運営に携わり、子どもにより良い教育環境を整えるために立ち上がった団体で、「社会教育関係団体」に位置付けられてもいます。

「社会教育関係団体」の定義は、社会教育法第三章第十条で次のように規定されています。

この法律で「社会教育関係団体」とは、法人であると否とを問わず、公の支配に属しない団体で社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう。

実は、PTAが位置付けられている社会教育関係団体は、学校教育法第十二章第百三十七条で、学校の施設を利用することを、許可されています。
なのでPTAは、行事やイベント等で、学校の施設(校庭や体育館等)を利用することができています。

【学校教育法第137条】
「学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる。」

実は、この法律を根拠に、兵庫県明石市の教育委員会が、非会員の保護者から、住民監査請求を起こされた事例があります。
住民監査請求の要旨は、以下の通りです。

●明石市の公立小学校のPTA非会員保護者が、明石市の教育委員会に対して請求
●理由
・同校PTAは、規約や理念に反し、保護者が会員か否かで児童への対応に差をつける等、活動に公共性・公益性を欠き、社会教育関係団体とはいえない。
・上記のとおり同PTAは社会教育関係団体とはいえないため、同校長及び学校管理課長が同PTAに無償で学校施設を使用させることはできない
・社会教育関係団体とはいえない同PTAに無償で学校施設を使用させている教育委員会は、違法行為を行っていると考えられる。
※くわしくは、令和2年11月19日に通知が出された、こちら(明石市立王子小学校PTAにかかる住民監査請求について(通知))をご確認ください。

この住民監査請求は、最終的には「棄却」という判断が下されました。しかし、学校施設に関しては行政の裁量が大きいゆえに、場合によっては、社会教育関係団体とみなされないPTAに対しては、学校施設の使用許可が出なくなる可能性もあります。

そもそもPTAは「Parent Teacher Association、父母と先生の会」の略で、保護者と教師が協力して学校運営に携わり、子どもにより良い教育環境を整えることを目的として活動している団体です。

子どもたちにより良い教育を提供するための団体が、保護者がPTAに加入しているかどうかで対応に差をつけることは、学校施設を使いにくくする可能性があるだけでなく、その理念からも大きく外れる行為だと考えます。そうした差別的な対応が、学校内での子ども同士のいじめや差別を助長するような結果にもつながりかねません。

任意加入が前提の組織ですから、仮に「子どもたちへの記念品」を贈るのであれば、PTAへの加入/非加入を問わず、全員に対して平等に配布するのが本来のPTAの役割である(活動の目的に適う)はずです。

時おり保護者からは、「PTA非加入なのに記念品を配ったら(もらったら)、その人は不当利得(法律上の正当な理由なく利益を受け、それにより他人に損失を与えた者は、不当利得を返還しなければならない)にあたるのではないか」といった不満や不安の声も聞かれます。

しかし、そもそも記念品は、“任意に渡したものを任意に受け取る”だけなので、何の罪にも当たりません。また前述したとおり、PTAへの加入/非加入にかかわらず、全員に記念品を配ることがPTAの活動目的に適うため、非加入家庭の子どもが記念品を受け取ることが「法律上の正当な理由がない」とは言えないでしょう。

 

<2024年9月25日追記>

【学校教育法】における「学校」には、幼稚園も含まれます。
(参考)学校教育法1条:第一条この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする

上記のとおり、「学校」に「保育園」は含まれまれず、【学校教育法】に相当する【保育所保育指針】にも【学校教育法137条」と同様の規定はありません。ただし、【保育所保育指針】の「第1章 総則」において、「入所する子どもの最善の利益を考慮し~」とあり、「入所する子どもの保護者に対する支援~」も「保育所の役割」としています。
以上の点から、「保育園」の保護者会においても、加入/非加入を問わず、全員に対して平等に対応するのが本来の保護者会(PTA)の役割である(活動の目的に適う)と考えます。

 

 

そもそも学校予算で購入すべきものをPTAで購入するのは原則NG

 

さらに、そもそも学校運営に欠かせない備品などをPTAの予算から支出することは、原則NGとされています。

(参考)PTAの予算で学校の備品を買うのはアリ?ナシ?

万が一、記念品ではなく、学校の備品などをPTAの予算から支出していて、その使用に当たって、PTAの加入の有無で対応に差をつけられている、というケースがあれば、大きな問題になります。

 

近年では、さまざまな方、団体の働きかけもあり、PTAが任意加入であるということが徐々に浸透してきています。

繰り返しになりますが、PTAは“保護者と教師が協力して学校運営に携わり、子どもにより良い教育環境を整えることを目的として活動している団体”です。そのため、保護者の加入/非加入に伴う心配や不安・懸念などを抱かずに済むような運営を、目指すべきではないでしょうか。

PTA’Sでも引き続き、PTAのあるべき姿を伝えるために発信を続けていきたいと思います。

2023年12月19日加筆修正

 

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※尚本解答は、弁護士からのアドバイスに基づいて作成しています。
状況によって異なる旨、PTA’Sの利用規約(https://ptas.site/terms/)に則って提供する旨をご理解の上、ご活用ください。

 

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