PTAは個人情報をどこまで守ればいいの?(個人情報取扱同意書ひな形ダウンロード有)

PTAをたすけるPTA'S(ピータス)_個人情報保護

PTAとは「Parent Teacher Association」の略です。従ってPTA活動は、保護者や子どもたちを始め、学校関係者や外部の協力者など、規模によっては1000人以上を巻き込んだ大きな活動になります。

取り扱う個人情報の量も多く、その管理に苦労している保護者の方も多いのではないでしょうか。

しかし実際のところ、会社や学校ではない任意のボランティア団体であるPTAは、個人情報をどこまで守るべきなのでしょうか?弁護士に聞いてみました。

 

PTAも個人情報保護法の対象に入る

 

個人情報の取り扱いについて定めている「個人情報保護法」は2017年5月30日に改正、施行され、同改正法に3年ごとに見直す規定が設けられ、これに基づき2020年にも改正され、同改正法は2022年4月1日から施行されます。

改正前は5000人以下の個人情報を取り扱う事業者は法の対象外とされていましたが、改正に伴って人数制限がなくなり、PTAも個人情報保護法の適用対象となりました。

では、実際にどのような点に注意して個人情報を扱うべきなのでしょうか。個人情報保護委員会が公開している「会員名簿を作るときの注意事項(個人情報保護法の改正に伴う対応について)」をもとに、必要な対応を見ていきましょう。

 

1:個人情報を集めたり保管したりするときの注意

 

まず、個人情報を集める前には、その利用目的を予め特定する必要があります。例えば「会員名簿を作成し、名簿に掲載される会員に対してお手紙等配布するため」などといった具合です。

本人から書面で個人情報を集めるときは、その書面上で上記の利用目的を明示する必要があります。

個人情報を保管するときには、集めた個人情報の漏えいを防止するために、適切な「安全管理措置」を講じなくてはなりません。事務局(=PTA本部)は盗難や紛失などがないよう適切に管理する必要があります(例:鍵のかかるロッカーでの保管、アクセス権に制限のあるクラウド上での保管など)。

また、名簿を第三者(=本人以外)に提供する可能性がある時には、利用目的をあらかじめ特定(例:「個人情報の載った広報紙を作成し、名簿に掲載されている会員に対して配布するため」など)した上で、個人情報を集める会員から同意を得ておく必要があります。

ただし、以下のような場合は、同意を得なくても提供することができます。

1:法令に基づく場合
2:人の生命、財産を守る場合
3:委託先に提供する場合

3の「委託先」には「会員名簿の印刷を委託する印刷業者」など、利用目的を超えて第三者に提供するのではなく、利用目的を遂行するための印刷物作成の委託に過ぎない場合などであり、例えば広報紙の印刷を委託する印刷会社に名簿を提供する場合、会員から同意を得る必要はありません。

ただし、印刷会社に委託する場合でも、適切な選定と監督が必要です。具体的には、個人情報が適切に取り扱われているか口頭で確認する、情報の持ち出し禁止、委託された業務以外の利用禁止、返却や廃棄などについて記載した書面を渡す、といった対応です。また当該業者が委託先に該当するか不安な場合は、個人情報を収集する際に念のため会員から同意をとっておいた方がトラブルは少ないでしょう。

集めた個人情報の内容に誤りがあったなど訂正をする場合には、そのための手続き方法などを本人にもわかるように書面などに記載しておく必要があります。請求に応じて訂正しましょう(個人情報保護法第29条1項、2項では、本人に訂正、追加、又は削除を求める権利を規定しております)。

PTAとは別に、学校でも個人情報の取り扱いに関する同意を取るケースがあると思いますがあくまでも学校とPTAは別の組織なので、PTAが個人情報を集める際には、独自に同意をとる必要があります。

そのほか、収集した個人情報を誰が取り扱うのかなどもPTAの内規で定めておく必要があります。取り扱う人の人数を定めた法令等はありませんが、取り扱い者を限定した方が、管理体制的にはより安全かと思われます。また、取扱者を限定するだけでは十分な監督とは言えませんので、PTA役員等でも取扱者に定期的に情報管理体制(誰が・いつ・どこで・どのように)について確認するなど、取扱者を監督する必要があります。

以上の内容に反した場合、個人情報保護法がPTAにも適用される以上、同法上の罰則が適用される可能性があります。例えば主務大臣からの勧告、中止命令(個人情報を第三者に提供する場合に、あらかじめ当該個人の同意を得ていない場合などに、その提供行為を中止させられること)が出されたり、これらに従わなかったときは罰金という罰則が科されたりする可能性もあります。また個人情報を漏えいしてしまった企業が民事上の損害賠償請求を受けるように、情報漏えいが発生すると保護者などから民事上の損害賠償請求を受ける可能性もあります。

特に子どもの個人情報など、心配をする保護者も多いでしょうから、PTAを気持ちのよい組織・活動にしていくためには、法律に則り、きちんとした説明、利用目的の明示、事前の同意や厳格な情報管理対策を施すことが大切です。情報漏えいが無いように、適切な情報管理を心がけるようにしましょう。

 

2:個人情報取扱同意書の作り方は?

 

以上を踏まえて、個人情報取扱同意書のひな形を作成いたしました。

個人情報漏洩のリスクは、PTAの運営側にのみあるわけではありません。本ひな形では保護者(会員)に対しても、利用目的の範囲で情報を取り扱うことに関して、同意を求める書式にしています。

また、利用目的の明示や、集めた個人情報の訂正についての記載など、参考にしていただけましたら幸いです。

「個人情報取扱同意書兼誓約書」
ひな形と作成時留意事項の
ダウンロードはこちら

今後、デジタル機器の使用など、子ども達の学習環境においても、益々情報の取り扱いに関して高い感度が求められます。
ここまで詳細にお伝えするのは、”大げさ””面倒くさい”と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、子ども達は私たち大人の後ろ姿を見ています。
まずは、保護者である私たち大人が、PTA会員を募る側も、PTA加入を検討する側も、双方が気持ちよく運営、参加するための正しい知識や情報を知っておく必要があります。そのために、詳細を調べて発信しています。

さまざまな判断をする際の材料として、ぜひ参考にしていただけましたら幸いです。

※上記ひな形は、個人情報取扱同意書兼誓約書としての法的な効力を保証するものではありません。これを利用したことによるトラブルについては、当サイトで責任を負いかねますので、各PTAの責任のもとご利用ください。

 

2021年5月19日掲載

 

 

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※尚本解答は、弁護士からのアドバイスに基づいて作成しています。
状況によって異なる旨、PTA’Sの利用規約(https://ptas.site/terms/)に則って提供する旨をご理解の上、ご活用ください。