コロナ禍の影響で、2020年は学校での行事やイベントの開催を見送ったPTAも多かったことと思います。
最近コロナも落ち着きはじめ、状況を見ながら徐々に行事を再開しようと準備を進めているPTAもあるでしょう。
そんな時に、お便りなどに掲載する写真の素材として、「一昨年の行事の写真を使いたい」というケースもあるかもしれません。
しかし、「卒業生が写っている写真」を許可なく使用することはできるのでしょうか?
問題になるのは「肖像権」
こうしたケースで問題になるのは、「肖像権」です。
肖像権は、法律上の明文的な規定はないものの、判例や学説などでは憲法13条を根拠法として認められている権利です。
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
過去の判例でも以下のように肖像権が認められています。つまり、他人から無断で写真を撮られたり、それを無断で公表されたりすることがないようにするための権利です。
「人はみだりに自己の容ぼう、姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し」
「人は自己の容ぼう、姿態を描写したイラスト画についてみだりに公表されない人格的利益を有する」
ですから当然、卒業生の写真を利用するケースでも、同意がなければ肖像権の侵害に当たる可能性があります。
肖像権を侵害しないために、必要な手続き
では、肖像権を侵害しないためにはどのような対応を取っておくべきでしょうか?
まず最も手っ取り早いのは、撮影前に保護者に対して許可を取っておくことです(未成年の場合、保護者である親権者(や法定代理⼈)の同意が必要です)。
同意書の中で
・撮影をすること
・撮影した写真を〇〇の目的で△△に掲載する可能性があること
を明記し、それに承諾してもらえれば、掲載にあたって肖像権の使用を許可されたことになります。芸能人がTV番組や写真集などで肖像を利用されるのも、TV会社や出版社に対して事前に同意しているからです。
また、その写真を卒業後も使用したいなどの場合には、その利用期間についても明記しておくと良いでしょう。例えば卒業後も利用したいのであれば「本許諾は、原則期限の定めなく有効です」「本許諾は卒業後5年間有効です」などの一文を入れておけばトラブルを回避できるはずです。
写真は個人情報にも当たる
また、個人を特定できる写真は、個人情報にも当たります。
以前の記事でも触れた通り、PTAも個人情報保護法へ配慮しなければなりません。
本人(保護者)に許可を取らずに写真を掲載した場合、肖像権の侵害に加え、個人情報の漏洩にもなりかねないので、十分注意するようにしましょう。
同意を取らずに撮影、掲載した場合
こうした同意を取らずに撮影、掲載した場合、肖像権の侵害や個人情報の漏洩として、掲載差し止めのほか、民法709条に基づく損害賠償を請求される可能性もあります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
以上、子どもの写真を撮影、掲載する場合の注意点をまとめました。
こうしたトラブルを未然に防ぐため、PTA’Sでは撮影や掲載にあたっての「肖像権の使用に関する同意書」のひな形と「作成時の留意事項」を作成いたしました。以下からダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。
2021年11月5日掲載
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※尚本解答は、弁護士からのアドバイスに基づいて作成しています。
状況によって異なる旨、PTA’Sの利用規約(https://ptas.site/terms/)に則って提供する旨をご理解の上、ご活用ください。