熊本県の公立小学校でPTA会長を務めた、吉田英太郎さんの🌸祝辞🌸です
Q.卒業式や入学式、周年行事などでは、PTA役員として、どのようなお祝いをされましたか
祝辞を贈った
Q.卒業式や入学式、周年行事などの祝辞で、大切にしていることは何ですか。
ずばり!主役の子どもたちを思うこと。あと来賓の○○議員に気を使わないこと。
Q.具体的な祝辞の文面や、引用された言葉などを教えてください。
小学校①
きょうは小学校を卒業し、また1歩、大人へと近づく皆さんに紹介したい、1冊の本を持ってきました。題名は『おばあさんのしんぶん』。作者は、東京大学を卒業し、島根県出雲市の市長や政治家としても活躍された、岩國哲人(てつんど)さんです。▼実はこの本は、新聞配達に関するエッセーコンテストで最優秀賞に選ばれた投稿が、原作になっています。その一部を読んでみたいと思います。▼戦時中、私は妹、弟と、母の故郷、島根県出雲市の祖父母の元へ、疎開しました。▼小学5年生の時から、朝は牛乳配達に加えて新聞配達も始めました。日本海の冷たい風が吹きつける村で、早朝からの配達はつらい仕事でしたが、戦後の日本では、みんながつらい思いをしていました。▼学校が終われば畑仕事。私の家では新聞を購読する余裕などありませんでしたから、自分が朝配達した家に行き、縁側でおじいさんの読み終わった新聞を読ませていただきました。おじいさんが亡くなっても、その家への配達は続き、おばあさんが優しくお茶まで出して、「てっちゃん、勉強してえらい子になれよ」と、まだ読んでいない新聞を読ませてくれました。▼そのおばあさんが3年後に亡くなり、私も葬儀に伺うと、隣の席のおじさんがこう言いました。「てつんど、お前は知っとったか?おばあさんはお前が毎日来るのがうれしくて、読めないのに新聞をとっておられたんだよ」。▼もうお礼を言うこともできないおばあさんの新聞。涙が止まりませんでした。▼皆さんはこの話を聞いて、何を感じましたか?おばあさんは新聞を読むために自分の家に来る「てっちゃん」のために、字が読めないのに新聞の購読を続け、優しく迎え入れてくれましたね。人のために何かをしてあげることは、何もたくさんのお金を使い、大きなことをしてあげることではありません。「相手のことを考え、思いやる気持ち」こそが、大切なのだと思います。▼皆さん、心の中で小学校生活を振り返りながら、右の方を向いてみてください。皆さんが6年間、危険な目に遭わないように見守り、「尾ノ上校区に住んで良かった」と思えるよう、いろんな活動をしてくださった地域の皆さんです。▼左の方を見てください。一緒に喜んだり悩んだり、皆さんが1歩1歩成長していけるよう、いろんなことを教えてくれた先生方です。▼そして後ろには、皆さんが真新しいランドセルを背負い、入学式で学校の門をくぐってからきょうまで、「無事に学校に行けたかな」「友だちと仲良くしているかな」「授業中、居眠りしていないかな」「最近、学校の話ぜんぜんしないけど、悩み事でもあるのかな」と、いつも気掛けて思いやってくれた、おうちの方々です。▼皆さんはこれだけ多くの人からの「思いやり」を受けて、きょうこの日を迎えています。皆さんにはこれから少しずつでもいいので、自分のできるだけの「思いやり」を、お世話になった人たちに贈れるような人になってほしいと、願っています。皆さんなら、きっとなれます。▼保護者の皆さま、お子さまのご卒業、おめでとうございます。また6年間PTA活動にご尽力いただき、ありがとうございました。先ほども述べましたが、入学以来きょうまで、お子さまの成長に一喜一憂してこられたことでしょう。その思いを、私たちPTA会員同士で共有し合うことができたなら、うれしく思います。▼校長先生をはじめ、学校職員の皆さま、きょうまで子どもたちへの多くのご指導、ありがとうございました。またご来賓の皆さま、地域の宝である子どもたちを、いつも温かく見守ってくださり、ありがとうございました。▼最後になりますが、卒業生の皆さん。尾ノ上校区はこれからも大きな家族として、皆さんのことを思い見守っていることを、忘れないでくださいね。卒業おめでとう!
小学校②
六年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。▼こうして卒業の日を迎え、小学校生活を終える皆さんに、吉田さんから二つのお願いがあります。皆さんが先ほど、校長先生から授与された卒業証書、丁寧にリボンで巻いてありますが、どうぞ開いてみてください。…。そこには皆さんの生年月日が書いてありますね。ちょっと想像してみてください。十二年前、無事に生まれてくれるか、家族がどれだけ心配したことでしょう。元気な泣き声を聞いて、どれだけ喜んだことでしょう。その卒業証書に書いてあるのは、皆さんだけでなく、家族にとってもかけがえのない日なのです。▼そして、家族の愛情を受け、先生方の熱心な指導を受け、地域の方々の支えを受けて、きょうこの日を迎えることができているのです。そのことを一度でも、真剣に考えたことがありますか?だから、その卒業証書を家族に見せるとき、これまでお世話になった人たちを思いながら、素直に「ありがとう」と、感謝の気持ちを伝えてください。これが一つ目のお願いです。▼そして二つ目のお願いは、これから先、その命を大切にしてほしいということです。校長先生のお話にもありましたが、皆さんは大事な仲間を亡くすという、悲しい出来事を経験しました。ですがそのことは、皆さんが「命」について真剣に考えた、証でもあります。吉田さんの家族の話ですが、春太郎には弟がいましたが、心臓の病気で、生まれて四カ月で亡くなりました。春太郎が二歳のころで、覚えてはいません。でも春太郎は、兄弟の数を聞かれたら「四人です」と答えてくれます。そして誰よりも、命について真剣に考えることのできる人だと、信じています。人の痛みを分からない人は、自分の命を大切にはできません。自分のことを信じられない人が、周りの人を幸せにできるはずがありません。一つ目のお願いの中で話した、お世話になった方たちに感謝の気持ちを伝えることは、命を大切にしないと、できないことなのです。▼「ありがとう」の言葉に感謝の気持ちを込めて、卒業証書を見せる。自分や周りの人の命を大切にする。吉田さんから二つのお願いです。では、卒業証書はまた、リボンで閉じてください。▼校長先生をはじめ、学校職員の皆さま。きょうまで子どもたちへの熱心なご指導、ありがとうございました。またご来賓の地域の皆さま。日ごろから子どもたちへの温かい見守り活動など、ありがとうございました。そして保護者の皆さま。PTAとして子どもの成長を応援する中で、様々な感動がありましたね。その一つ一つを皆さまと共有できたこと、本当にうれしく思います。ありがとうございました。▼それでは卒業生の皆さん。これからは一歩大人に近づいた中学生として、尾ノ上小の後輩を応援してください。将来の夢に向かって頑張る皆さんと、また地域で再会できることを、楽しみにしています。卒業おめでとう!
中学校①
錦ヶ丘中学校を卒業する258人の皆さん、ご卒業おめでとうございます。本来なら式に参列し、直接お祝いの気持ちを伝えたかったのですが、できなくなってしまいました。今年度会長に就任したものの、皆さんとお話しをする機会を持てないままこの日を迎えることになり、本当に残念でなりません。また皆さんをずっと見守ってきた地域の方たちも、同じ気持ちだと思います。▼新型コロナウイルスが感染拡大し、1年前の先輩たちの卒業式が縮小になった際、「1年後自分たちの卒業式はどうなるんだろう」「きっと拡大も収まっているに違いない」と、思っていた人も多かったことでしょう。しかし今回も、体育館には在校生も来賓の方々もいない形での式になってしまいましたね。▼ですが分かってほしいことがあります。それはきょうまでの間に、「3年生が笑顔でそして安全に卒業するには、どうすればいいか」「寂しさを感じさせないためには、どうすればいいか」と、先生方が一生懸命考えてくださっていたことです。全国では、保護者が参列できない卒業式がありました。教室でクラスごとに行う式もあったそうです。そのような中、錦ヶ丘中学校では、保護者が参列し皆さんの門出を共に祝うことができました。すでに大人として扱われることもある皆さんには、これがどんなに大変なことだったか想像できるはずです。「在校生や来賓の方がいない卒業式だった」と残念に思うよりも、「大変な中でも、先生や家族のおかげで開催できたんだ」と、“小さな幸せ”を感じることのできる人になってほしいと思います。
▼また皆さんの後ろで晴れの日を見守るご家族への感謝も、忘れてはいけません。中学生になり背丈では変わらなくなっても、生意気な態度を取るようになっても、心配は尽きないものです。それが親です。いまもコロナ禍で仕事が大変な状況の中、「式は開催してほしい」「参列して成長した姿を見たい」と願い、この卒業式が開催できたのです。そのご家族の思いを、胸に留めておいてください。▼これから皆さんは、初めて自分で決めた“それぞれの道”を歩みだします。ですが錦ヶ丘中学校が皆さんにとっての“帰れる場所”であることには、変わりありません。前に進みたいとき、良いことがあったとき、上手くいかないとき、少し立ち止まりたいとき…。いつでも帰ってきてくださいね。卒業おめでとう!
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