先日、埼玉県公立小中学校事務職員研究協議会様からのご依頼で、PTAについての研修講師を務めさせていただきました。

参照:「埼玉県公立小中学校事務職員研究協議会様からのご依頼で、PTAについての研修講師を務めさせていただきました」
100名を超える学校事務職員の皆さんにご参加いただき、PTA会費の徴収や会計、個人情報の管理、PTA未加入家庭への対応など、学校現場で実際に生じている様々な課題やPTAとの関わりについてお話しさせていただきました。
事務職員の視点でPTA業務について考えたことをきっかけに、改めて「PTAの仕事を、学校の先生や事務職員の皆さんにお願いすること」について、法的な根拠も含めて調べてみました。
「PTAの仕事を、学校の先生にお願いしてもいいの?」
PTA活動をしていると、こんな疑問を持つことはありませんか?
たとえば、
・PTA担当の先生に、PTA総会の準備をお願いしている
・PTAから学校への連絡を、先生が窓口になっている
・PTA会費の集金や会計処理を、学校の先生が手伝っている
・PTAの役員選出について、先生に協力してもらっている
・PTA行事の準備や運営を、先生が担っている
・「昔から先生がやっているから」という理由で、先生にお願いしている
こうした仕事は、学校によって様々です。
では、法律上、学校の先生がPTAの仕事をすることに問題はないのでしょうか。
逆に、PTA側から「先生にお願いしていい仕事」と「PTA自身が担うべき仕事」を、どのように考えればよいのでしょうか。
実は、「PTAの仕事は全部PTA」「学校の仕事は全部学校」と一律に線引きできるわけではありません。
大切なのは、それぞれの業務について、「これは誰のための、誰の責任で行う仕事なのか」を一つずつ確認することです。
この記事では、校務分掌、PTA活動、教職員の職務、学校とPTAの関係について、法律や文部科学省の資料を確認しながら整理します。
※この記事は、PTA・学校・教職員が業務の分担を考えるための一般的な情報をまとめたものです。個別の学校・自治体における具体的な判断については、各自治体の条例・規則、学校管理規則、PTA会則、実際の業務分担等も確認してください。
まず、「校務分掌」とは?
「校務分掌」とは、学校の中で行われるさまざまな仕事を、教職員で分担する仕組みです。
たとえば、
・教務
・生徒指導
・進路指導
・保健・安全
・防災
・ICT
・図書
・研究・研修
・学校行事
・地域との連携
・PTAとの連絡調整
など、学校ごとにさまざまな担当が置かれています。
文部科学省も、学校が組織として教育活動を行うために校務分掌を定め、教職員がそれぞれの校務を分担する仕組みについて説明しています。
*根拠・参考:文部科学省「第1章 学校の管理運営をめぐる課題と検討の基本的視点について」👉文部科学省の資料を見る
ここで注意したいのは、
「校務分掌に書かれている=その仕事はすべて学校本来の仕事である」
とは限らない、ということです。
校務分掌は、基本的には学校組織の中で仕事を分担するための仕組みです。
そのため、PTAに関する担当が校務分掌に置かれている場合でも、具体的に何を担当しているのかを確認することが大切です。
PTA担当の先生=PTAの仕事をする先生、ではありません
学校によっては、「PTA担当」「PTA係」など、PTAとの連絡調整を担当する教職員が置かれていることがあります。
ただし、「PTA担当」という名称だけでは、その先生がPTAの内部事務をすべて担うことまで意味するわけではありません。
たとえば、
学校とPTAの連絡調整
・PTAから学校への相談を受ける
・学校からPTAへ連絡する
・PTA役員と学校行事の日程を調整する
・PTA活動について学校内で情報共有する
などは、学校とPTAとの連携に関する仕事として位置づけられる場合があります。
一方で、
PTAそのものの内部事務
・PTA会費の管理
・PTA会計
・PTA会員名簿の管理
・PTA役員の選出
・PTA総会の運営
・PTA独自のイベントの企画・運営
などについては、誰が、どのような根拠で担っているのかを確認する必要があります。
PTAの仕事を学校の先生にお願いすることについて、法律ではどう考える?
ここが、このテーマを考えるうえで最も重要なところです。
校長先生には「校務をつかさどり、所属職員を監督する」権限があります
学校教育法では、小学校の校長について、「校務をつかさどり、所属職員を監督する」と定められています。
中学校についても、学校教育法第49条により、小学校に関する規定が準用されています。
つまり、学校の中で教職員がどのような校務を分担するのかについては、校長による学校運営・職員の監督という仕組みがあります。
*根拠法:学校教育法第37条第4項、第49条👉「学校教育法」を見る
また、文部科学省も、学校管理の仕組みについて、教育委員会が学校管理規則を定め、具体的・日常的な学校運営を校長に委ねる仕組みを説明しています。
*参考:文部科学省「学校の管理運営をめぐる課題と検討の基本的視点について」👉文部科学省の資料を見る
ただし、「PTAの仕事=校務」ではありません
ここは非常に重要です。
校長先生が校務をつかさどることと、PTAが行う仕事をすべて学校の校務として扱うことは、同じではありません。
PTAは、文部科学省も「任意の社会教育団体」と説明している団体です。
文部科学省は、PTAについて、保護者と教師が自主的に参加する任意の団体であり、その運営はそれぞれのPTAが地域の状況に応じて自主的に決めるものと説明しています。
*参考:文部科学大臣記者会見(令和4年6月17日)👉文部科学省「末松信介文部科学大臣記者会見録」
そのため、「PTAの仕事だから学校がやる」でも、「PTAの仕事だから先生は一切関わってはいけない」でもなく、具体的な業務ごとに考える必要があります。
教職員の勤務時間中の仕事には「職務専念義務」があります
公立学校の教職員について考える場合、もう一つ重要なのが地方公務員法です。
地方公務員法第35条では、職員は、原則として勤務時間中、その職責を遂行するために用い、地方公共団体が責任を負う職務に従事しなければならないとされています。
*根拠法:地方公務員法第35条「職務に専念する義務」👉「地方公務員法」を見る
そのため、「先生が勤務時間中にPTAの仕事をしている」という事実だけを見て判断するのではなく、「その仕事は、学校・教育委員会が担うべき公的な職務として位置づけられているのか?」という視点が重要になります。
もちろん、学校とPTAの連絡調整など、学校とPTAの連携に必要な業務がすべて「PTAの仕事」というわけではありません。
だからこそ、業務ごとの整理が必要なのです。
PTA担当の先生が担う仕事は、全部PTA業務?
たとえば、同じ「PTA担当」の先生でも、仕事内容によって意味が変わります。
「学校とPTAをつなぐ仕事」
たとえば、
・PTAから学校への相談を受ける
・学校からPTAに情報を伝える
・PTA役員と学校行事の日程を調整する
・PTA活動について校内で共有する
といった仕事は、学校とPTAの連絡調整として学校側の業務に含まれる場合があります。
一方、
「PTA自身が運営する仕事」
たとえば、
・PTA会費の会計
・PTA独自の名簿管理
・PTA役員の選出
・PTA総会の議事運営
・PTA独自のイベントの企画
・PTA会報の編集・発行
などは、PTA自身の組織運営に関する仕事という性格が強くなります。
ただし、ここも「だから学校職員が関わったら違法」と単純には言えません。
実際に学校職員がどこまで関わることになっているのか、その業務が学校の職務としてどのように位置づけられているのか、自治体や学校の規則、実際の運用などを確認する必要があります。
PTAに加入していない先生にお願いしてもいい?
PTA活動を見直すとき、よく出てくるのが、「PTAに加入していない先生に、PTAの仕事をお願いしていいの?」という疑問です。
ここでは、「PTA会員かどうか」と「その先生の公務として、その仕事を担当するのか」を分けて考える必要があります。
PTAは任意の団体であり、加入・退会については各PTAが判断するものだと文部科学省も説明しています。
*参考:文部科学省「末松信介文部科学大臣記者会見録」👉文部科学省の資料を見る
一方で、教職員が公務として学校とPTAの連絡調整を行うことについては、PTA会員かどうかだけで判断できるものではありません。
したがって、「PTAに入っていない先生だから、PTAに関する仕事は一切できない」とも、「先生はPTA会員だからPTAの仕事をする」とも、一律には考えられません。
重要なのは、その仕事が何のために行われ、誰の責任で行われる仕事なのかです。
学校事務職員にPTAの仕事をお願いしてもいい?
「PTAの事務だから、学校の事務職員にお願いすればいいのでは?」
という考え方もあります。
しかし、これも単純ではありません。
学校教育法では、学校には事務職員を置くこととされ、事務職員は「事務をつかさどる」とされています。
*根拠法:学校教育法第37条第15項👉「学校教育法」
さらに文部科学省は、事務職員が学校運営に積極的に参画することを想定し、標準的な職務の例を示しています。
その中には、
・学校の組織運営
・教育活動に関すること
・学校と地域との連携
・保護者、地域住民、関係機関等との連絡調整
・情報管理
などが含まれています。
*参考:文部科学省「事務職員の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」👉文部科学省の資料を見る
ただし、ここでも、「事務職員だからPTAの内部事務を当然に担当する」という意味ではありません。
学校の事務なのか、PTAという任意団体の事務なのかを分けて考えることが大切です。
文部科学省は、学校と教師の業務をどう整理している?
ここで参考になるのが、文部科学省の「学校と教師の業務の3分類」です。
*参考:文部科学省「学校と教師の業務の3分類」👉文部科学省「学校と教師の業務の3分類」
文部科学省は、教師が「教師でなければできないこと」に集中できるよう、学校・教師が担う業務について、次の3つに整理しています。
① 学校以外が担うべき業務
代表例として、
・登下校時の通学路における日常的な見守り活動等
・放課後から夜間などの校外見回り
・学校徴収金の徴収・管理
・地域学校協働活動における関係者間の連絡調整
などが挙げられています。
② 教師以外が積極的に参画すべき業務
たとえば、
・調査・統計
・学校広報
・ICT機器・ネットワークの保守
・学校施設・設備の管理
などです。
③ 教師の業務だが、負担軽減を促進すべき業務
たとえば、
・給食対応
・授業準備
・学習評価・成績処理
・学校行事の準備・運営
などが挙げられています。
また、文部科学省は保護者・地域向けにも、この3分類をもとに学校・教師が担う業務の適正化を進めていることを説明しています。
*参考:文部科学省「地域・保護者の皆様へ」👉文部科学省「地域・保護者の皆様へ」
PTAの仕事についても、この考え方を参考にできます
「PTAだから3分類のどこに入る」と文部科学省が一律に定めているわけではありません。
しかし、「その仕事は、本当に教師が担う必要があるのか?」「学校が担う仕事なのか、それとも学校以外が担う仕事なのか?」を考えるうえで、この3分類は重要なヒントになります。
PTA関連業務を一度、全部書き出してみましょう
PTAの業務を考えるとき、いきなり「先生にお願いしていい・ダメ」と決めるのではなく、まず下記のように現在行っている仕事を書き出してみてはいかがでしょうか。
・PTA役員との日程調整
・PTA会費の徴収
・PTA会員名簿の管理
・PTA総会資料の作成
・学校行事とPTA活動の調整、など
ここで重要なのは、「学校の仕事」「PTAの仕事」のどちらかに無理に分類することではありません。
まずは、
・誰が現在担当しているのか
・何のための仕事なのか
・誰に責任があるのか
・学校側にどのような必要性があるのか
・PTA側にどのような必要性があるのか
を書き出してみましょう。
そのうえで、「今後も同じ人が担当する必要があるのか」を考えてみるのがいいのではないでしょうか。
「誰の仕事なのか?」を考える5つの視点
PTA関連業務の担当を考えるときは、次の5つの視点が役立ちます。
① その仕事は「誰のため」のもの?
学校教育のためなのか。PTA会員のためなのか。子どもたちのためなのか。学校と家庭の連携のためなのか。まず目的を確認します。
② 最終的な責任を負うのは誰?
仕事を行う人と、責任を負う人は、必ずしも同じではありません。「誰がやるか」だけでなく、「問題が起きたとき、誰が責任を負うのか」を考えてみましょう。
③ 学校の公的な職務として位置づけられている?
公立学校の教職員の場合、勤務時間中は、地方公共団体が責任を負う職務に従事するという職務専念義務があります。
*根拠法:地方公務員法第35条👉「地方公務員法」
そのため、PTAの仕事についても、学校の公的な職務として位置づけられているのかを確認することが重要です。
④ 「昔からやっている」以外の根拠がある?
PTA活動では、「昔から先生がやっています」「前のPTA会長のときからこうしています」ということが、意外と多くあります。しかし、過去から続いていることと、現在もその仕事を同じ人が担う必要があることは別の問題です。文部科学省も、学校・教師の業務について、地域や学校ごとの議論を踏まえて不断に見直すことが必要だとしています。
*参考:文部科学省「学校と教師の業務の3分類」👉文部科学省の資料を見る
⑤ その仕事を「先生でなければできない」のか?
最後に、「この仕事は、本当に先生でなければできないのか?」と考えてみましょう。
PTAの仕事の中には、教員の専門性が必要なものもあれば、PTA役員や保護者、地域、事務職員、外部スタッフなど、別の担い手を検討できるものもあるかもしれません。
「先生にお願いしていい?」を考えるときのポイント
ここまでを整理すると、PTAから先生に仕事をお願いするときは、
「お願いしていいか、ダメか」だけで判断しない
ことが大切です。
たとえば、
「学校とPTAの連絡調整」なら
学校とPTAとの連携に必要な仕事として、学校側の担当者が関わることがあります。
「PTA会計」なら
PTAという団体の内部運営に関する仕事としての性格が強いため、誰がどのような根拠で担当しているのかを確認してみる必要があります。
「PTA行事への参加」なら
学校教育との関係、行事の目的、学校としての位置づけ、教職員の職務としての位置づけなどを確認する必要があります。
つまり、「PTAの仕事」という一言でまとめず、仕事を細かく分解することが重要です。
学校とPTAで話し合うときの進め方
PTAの仕事を見直すとき、いきなり、
「これは先生の仕事ではありません」
と学校に伝える必要はありません。
むしろ、
「現在行っているPTA関連業務を、一度整理してみませんか?」
というところから始めると、話し合いやすくなります。
STEP1 現在の仕事を全部書き出す
まずは棚卸し表を作ります。
STEP2 誰が担当しているか確認する
先生、事務職員、PTA役員、保護者など、実際の担当者を書きます。
STEP3 仕事の目的を確認する
「何のためにやっている仕事なのか」を確認します。
STEP4 根拠を確認する
学校教育法、地方公務員法、教育委員会の規則、学校管理規則、PTA会則など、関連するルールを確認します。
STEP5 今後の担当を一緒に考える
「今まで誰がやってきたか」ではなく、
「これから誰が担うのが適切なのか」
という視点で考えます。
PTAと学校は、対立する必要はありません
「PTAの仕事を先生にお願いしていいの?」
という問いは、先生の仕事を減らすためだけの話ではありません。
PTAにとっても、
-
PTA役員の負担を減らせる
-
保護者が本当に必要な活動に集中できる
-
「学校にお願いする仕事」と「PTAが担う仕事」が分かりやすくなる
-
新しい役員が仕事を引き継ぎやすくなる
というメリットがあります。
学校にとっても、
-
教職員の業務負担を見直せる
-
PTAとの役割分担が明確になる
-
「誰に何を相談すればよいか」が分かりやすくなる
-
PTAとの関係をより健全なものにできる
といったメリットがあります。
文部科学省も、学校と教師の業務を見直す際には、保護者や地域住民の理解・協力・連携が重要だとしています。
参考:文部科学省「地域・保護者の皆様へ」
文部科学省「地域・保護者の皆様へ」
「先生にお願いすること」が悪いのではなく、「なぜ先生にお願いしているのか」が大切
PTA活動では、
「先生にお願いするのは申し訳ない」
「先生の仕事を増やしてはいけない」
と考えすぎてしまうこともあります。
一方で、
「PTAなんだから先生にやってもらって当然」
という考え方も、これからのPTAには合わないかもしれません。
大切なのは、
「この仕事は、なぜ先生にお願いしているのか?」
を、PTAと学校の双方が確認することです。
その仕事が学校とPTAの連携に必要なのであれば、学校側の担当者が関わることに合理性がある場合もあります。
反対に、PTA内部の運営のためだけに行っている仕事であれば、PTA側で担う方法を検討することもできます。
まとめ
「PTAの仕事、学校の先生にお願いしていいの?」
この問いに対して、
「PTAの仕事だから先生にお願いしてはいけない」
とも、
「PTA担当の先生だから、PTAの仕事は何でもお願いしていい」
とも、一律には言えません。
大切なのは、仕事を一つずつ分解して、
-
何のための仕事なのか
-
誰の責任で行う仕事なのか
-
学校の公的な職務として位置づけられているのか
-
PTAの内部運営に関する仕事なのか
-
本当に先生でなければできない仕事なのか
-
今後、誰が担うのが適切なのか
を考えることです。
文部科学省が示している「学校と教師の業務の3分類」も、こうした見直しを考える際の重要なヒントになります。
参考:文部科学省「学校と教師の業務の3分類」
文部科学省「学校と教師の業務の3分類」
PTAの活動を見直すことは、単に「先生の仕事を減らす」ことではありません。
PTAと学校、それぞれが本来担う役割を見直し、より無理なく、長く続けられる関係をつくること。
そのための第一歩として、まずは現在のPTA関連業務を全部書き出してみてはいかがでしょうか。
PTA’Sからのお願い
PTA活動を見直すとき、
「これはPTAの仕事?」
「学校にお願いしていいの?」
「先生にお願いしているけれど、これってどうなんだろう?」
と迷うことがあると思います。
そんなときは、最初から「誰の仕事か」を決めるのではなく、まずは今、誰が、何のために、その仕事をしているのかを書き出してみてください。
そして、PTA・学校・教職員、それぞれの立場から、一緒に考えてみてください。
PTAと学校が、お互いに「やってもらう・やってあげる」という関係ではなく、
「子どもたちのために、それぞれが無理なくできることを担う」
そんな関係をつくることが、これからのPTAには大切なのではないでしょうか。
PTA’Sでは、PTA活動に関するさまざまなご相談をお受けしています。
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